1.医薬品のPKU治療乳の有効期限延長について PKUの治療用ミルクは、現在では薬価収載された医薬品として雪印乳業で製造されている「新ペプチドロフェ」と「新フェニルアラニン除去ミルク」の2品目のみであり、ビーンスタークス・スノ-から発売されています。ミルクの有効期限はこれまでは6カ月でしたが、最近になって延長されました。そのためにはミルクの様々な栄養素の安定試験を行い、厚生労働省にそのデータを提出して製造認可を受けています。有効期限が長い方が患者さんの使い勝手もよくなり、また1回の処方箋で沢山のミルクを受け取ることが出来ます。期限切れによる廃棄処分も少なくなり、無駄を省くことにもなります。アミノ酸を使用したミルクは一般の育児用粉乳と比べて有効期限は短くなりますが、今回の安定試験により製造日から「新ペプチドロフェ」は9カ月に、「新フェニルアラニン除去ミルク」は12カ月に延長されていますので、ご家族にとっても使いやすくなっています。 登録特殊ミルクも安定試験を行って有効期限を延長するように、各乳業会社にお願いしております。 2.マターナルPKUに対する治療乳供給中止について 妊娠・出産を希望するフェニルケトン尿症の女性に対して、胎児の障害を予防することを目的に、平成10年より18歳以上の女性に対して無料でPKU治療乳を供給して参りました。この制度は、薬価収載品(医薬品)である雪印乳業の新フェニルアラニン除去ミルクを特殊ミルク事務局で買い上げて、妊娠・出産を希望するPKU女性に無料で供給する制度です。この制度の趣旨は、「PKUの患者さんが出産を希望する場合は、妊娠前から出産までの一定期間特殊ミルクにより血中のフェニルアラニン値を厳しくコントロールする必要あありますが、年齢が18歳以上である場合は薬価収載品を使用する際に3割の自己負担金が必要となります。そのため、特例措置として雪印乳業の薬価収載されているミルクを特殊ミルク事務局で買い上げて、妊娠・出産を希望されているPKUの患者さんに無料で供給する」というものです。 ところが、昨年12月に雪印乳業より、この制度には様々な観点から重大な問題があり、以下の理由で現行の制度を変更して欲しいという申し出がありました。 すなわち、薬事法第26条3によると、「医薬品を薬局開設者、医薬品の製造業者、輸入販売業者または販売業者及び病院、診療所などの開設者以外の者に対し、販売し、または授与してはならない」と記載されており、特殊ミルク事務局での薬価収載ミルクの買い上げは薬事法に違反することになる、という指摘です。そのための代案として雪印乳業が提示した方法は、マターナルPKUに対して医師が医薬品を処方した場合に、薬局より購入したときの購入を示す証書を提示して特殊ミルク事務局に申請し、問題なしと判断された場合は健康保険対象外分についての差額(3割負担分)を、特殊ミルク事務局から患者さんにお支払いして欲しい、というものです。 しかし現在の特殊ミルク事業の制度では、補助金の中から患者さんに直接費用をお支払いすることは出来ない、という問題があるので、平成10年から継続してきたこの制度を今年5月31日で中止し、その代わりとして現在登録品として扱われているフェニルアラニン無添加総合アミノ酸末(A-1、雪印乳業)、フェニルアラニン除去アミノ酸混合物(809、明治乳業)、及び低フェニルアラニンペプチド粉末(MP-11、森永乳業)を、特例措置として妊娠出産を希望するPKU女性に供給させていただくこととしました。現在マターナルPKUとしてミルクの供給を受けてこられた患者さんを担当しておられる先生には、この制度の変更を御連絡して、ご理解をいただいております。 この制度は、18歳以後の女性全てに無料で特殊ミルクを供給するというものではなく、あくまでも妊娠・出産を希望する場合に限らせて頂いており、またそれ相応の期間に限って適応させて頂くことになっております。既にこれまでの制度で無事出産された方も数名いらっしゃいますが、出産後のミルクは自己負担をお願いしております。御担当医とご相談の上、お申し込み下さるようお願い致します。また、登録品はミルクではないので、その使用法は担当の医師あるいは栄養士とご相談の上、正しくご使用いただくようお願いいたします。今回の制度の変更に対して、ご理解とご協力をお願い致します。マターナルPKUにフェニルアラニン除去ミルクなどの医薬品の供給は出来なくなりましたが、それに変わるアミノ酸末などはこの制度で18歳~20歳を過ぎても利用できるので、ご活用いただきたいと言うことです。フェニルアラニン除去アミノ酸末はミルクではありませんが、成人例では十分に使用出来ると思います。PKUの女性が妊娠・出産を希望された場合は、それまでのフェニルアラニン制限をより一段と厳しくして血中フェニルアラニン値をコントロールする必要がありますが、そのためには通常よりもミルクあるいはアミノ酸末を沢山使用する必要があることから、その間一時期だけ無料で提供するという考え方です。ご理解下さるよう、お願い致します。何か不明な点があればご相談下さい。 特殊ミルク事務局 青木菊麿